彼女を力の限りに抱きしめていたのだ。
彼女が誰かに奪われてしまう位なら、強く抱いて壊してしまいたいとすら思ったのだ。
物心ついた時から喜怒哀楽が無く、何かに夢中になる事もなかった自分の中にこれほどの激しい情が眠っていた事に自分でも驚いた。
だか、当然彼女のリアクションは引いていた。
完全に、引いていた。
次の日からはまるで心にぽっかりと穴が空いた様に、まるで生気の無い人間になっていた。
仕事に打ち込めるはずもなく、上司には放っておかれるようになり、業績もみるみる内に下がっていった。
あれほど慕ってくれていた部下たちも、冷めた目で私を見るようになった。
当然、恋人も私の目の前から消えていった。
だが、空っぽになった私に苦しみなど無かった。
全てがどうでもよかったのだ。
ただ酒が美味かった。
やがて仕事も辞め、じっくり自分と向き合う時間が増えた。
今まで充実した成功者の生活を送ってと思っていたが、それは本当の意味の充実とはかけ離れたものだという事が分かった。
私は旅に出る事を決意した。
第3章に続く...